ドワンゴ現役エンジニア・塩原大介さんに学ぶ、AIがコードを書く時代に「手と目と頭を動かす」理由とは

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AIがコードを書く時代に、エンジニアは何をやるのか?」この問いを掲げた特別講演「手と目と頭を動かす」。登壇したのは、eラーニングサービス「ZEN Study」を10年支え続けてきた株式会社ドワンゴの塩原大介さん。2026年時点の「AI時代の学び方」をお届けします。

 

1.ソフトウェアエンジニアの仕事とは?

そもそもソフトウェアエンジニアとは何をする仕事なのか。「技術の力を武器にして問題を解決すること。それに必要なソフトウェアを提供し続けることです」。ものは作れて当たり前。提供し続け、改善し続ける――そういう仕事です。では、その役割はAIに奪われるのか。答えは「分かりません。ただし、歴史と経験から言えることが3つあります。まず、物理法則や生物の特性は変わらない。普及している道具、例えばスマートフォンなどは急には置き換わらない。人間が身につけた知識と能力はゼロにはなりません」と示唆し「天然の知能を鍛える価値はより高まります。全部は奪われない方に賭けて、自分を磨くしかありません」と続けました。

2AI丸投げは「模倣ですらない」

学び方の鍵は「守破離」。守破離とは、師の型を忠実に守る「守」、型を破って応用する「破」、型を離れて自分の道を生み出す「離」という修業の3段階を表した言葉。まずは「守」=先人の型を身につけて自分の基準をつくること。その材料は、優れたコードの分析やスクールの課題です。

塩原さん「課題をやるとき、AIに聞いた答えをコピペしたくなるでしょ?でもそれは模倣にすらなっていません。一回も自分の頭を通っていない答えを貼るのは、問題集の丸写しと同じなんですよ」と釘を刺し、あわせて注意喚起も。

塩原さん「エラーが出たとき、AIに言われたコードをえいやっと貼って『直りました』『なんで直ったんですか?』『分かんないです』。このように形だけまねして、中身や本質が分かっていない状態を『カーゴ・カルト・プログラミング』と呼びます。だからこそ根っこまで掘って、解決しようとする意識が重要です」

3.要点を見抜き、違和感を覚える「直観力」を身につけて

では、基礎とは何か?塩原さんは「地図を持つこと」と表現。ボタンを押してから画面が変わるまでに何が起きているのか。保存したデータはどこに、どんな形で置かれるのか?関心範囲の「隣、その隣」まで想像できると、自分のすべきことがおのずと見えてきます。あわせて必要なのが、少ない情報から要点を見抜き、違和感を覚える「直観力」。

塩原さん「最後までやりきった経験からしか、直観力は手に入りません。AIの成果物の良しあしを判断し、ゴーサインを出すのは、人間の役割です。地図も直観力もないままゴーサインを出すのは、判断ではなく『よくわかんないけどヨシ!』としているのと同じです」

4.自分のプロジェクトを持つ

明日からできる実践方法が「自分のプロジェクトを持つ」こと。欲しいツールを開発するのでも、LLM(大規模言語モデル)で記憶と性格を持たせたbotでもいい。

塩原さん「メンテナンスフリーでもいいけれど、長く愛着を持つアプリケーションを持つと面白いです。ぜひ、自分で面倒を見てほしいです。最悪、自分のものだから壊れてもチャンスになります。原因までたどって直す、『動いた』で止めない、何が起きていたか理解する」

そして「作った後が本番」。ソフトウェアは開発、運用・監視、保守・障害対応、継続的改善と続きます。多くの課題は「動いた」がゴールになりやすい。しかし自分のプロジェクトならサイクルが回りはじめ、自分の責任範囲内でこの体験を積むことができます。

5.技術力を持てば、選ぶ側に回れる

技術力とは、知っている言語やフレームワークの数ではありません。

その領域に「地図を持っている、さらに土地勘があること」。そのうえで、違和感に気づける「直観力」、原因を突き止める「考察力」、倒しきれる「踏破力」。どれも「次にどこを見ればいいか」が分かるからこそ成り立つ力です。

塩原さん「AIが普及するほど、人間の仕事は『決めて、話して、判断する』に寄っていきます。クライアントから『この機能が欲しいです』と言われたら、その言葉の背景まで聞くこと。作らずに解ける場合もありますし、言われたものをただ作るだけなら、AIのほうが速いからです」

塩原さん「今からできることは2つ。課題にちゃんと取り組んで、世界の地図の輪郭を広げ、基礎をしっかり固めましょう。そして自分のプロジェクトを持ち、教わった型の外を自分で体験して、自分だけの楽しさを見つけてください。ソフトウェア開発は、失敗できます。壊しても誰もけがしないし、やり直せます。基礎を学びましょう。形無しに未来はありません。直観を磨いて、最後までやりきってください」

熱量高く語った塩原さんは、最後に「この仕事は、俺は楽しいと思っています」と結びました。

受講したIT総合コース1年次・山下裕子さんは「AIに質問するとすぐに答えを出してくれますが、自分のタメになっている感がなく、とても納得がいきました。基本を学んでいきます」とこれからの学びに対する意欲を見せました。

メンバーは在学中に、手と目と頭を動かし、世界の地図の輪郭を広げていきます。

 

PROFILE

塩原大介(しおはら・だいすけ)さん

株式会社ドワンゴ 教育事業本部 e-learningプロダクト開発部 Webフロントエンドセクション マネージャー。2017年新卒入社、今年で10年目。eラーニングサービス「ZEN Study(旧・N予備校)」を中心とした各サービスのWebフロントエンド全般を担う。TypeScriptの技術カンファレンス「TSKaigi」共同主催者も務める。

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